「施工管理」という言葉を聞いて、あなたはどんな姿を思い浮かべるでしょうか。
ヘルメットをかぶり、現場で職人さんたちに指示を出している姿かもしれません。
もちろんそれも大切な仕事の一部ですが、実は施工管理の仕事はもっと奥深く、幅広いものです。
ひと言でいうなら、それは「何もない場所に、設計図通りの建物を、決められた期間とお金で、安全につくりあげるための、すべての管理をおこなう仕事」です。
まるで、まっさらなキャンバスに絵を描くように、あるいはバラバラの材料からプラモデルを組み上げるように、一つのプロジェクトの始まりから完成までを見届ける。
その過程では、たくさんの人々と関わり、様々な出来事に対応していく必要があります。
ときにはオフィスでパソコンに向かい、ときには現場の最前線に立つ。
建物の建設はもちろん、道路や橋、トンネルといった社会を支える大きなものづくりにも、施工管理の仕事は欠かせません。
それは、人々の暮らしや社会そのものを、根っこから支える仕事といえるでしょう。
ものづくりの中心で、たくさんの「ありがとう」に出会える。それが施工管理という仕事の、大きな魅力の一つです。
施工管理の役割は「オーケストラの指揮者」。プロジェクト成功の鍵を握る仕事
施工管理の役割を、何かにたとえるなら「オーケストラの指揮者」がぴったりかもしれません。
指揮者自身は楽器を演奏しませんが、それぞれの楽器の特性や楽譜のすべてを理解し、演奏者たちに指示を出すことで、一つの素晴らしい音楽をつくりあげます。
施工管理の仕事もこれとよく似ています。
自らトンカチを握ったり、鉄筋を組んだりすることはありません。
その代わり、大工さん、左官屋さん、電気屋さんといった、それぞれの分野の専門家である職人さんたちの力を最大限に引き出し、設計図という楽譜をもとに、一つの建物を完成へと導いていくのです。
そのためには、工事全体の流れを把握し、どこでどの職人さんに動いてもらうか、どんな材料がいつまでに必要か、といった段取りを組む必要があります。
ときには、異なる専門家同士の意見を調整したり、予期せぬトラブルに対応したりすることも求められます。
たくさんのプロフェッショナルたちをまとめあげ、プロジェクトという名の壮大な交響曲を奏でる。
その中心に立つのが施工管理であり、その采配（さいはい）一つで、プロジェクトの出来栄えや成功が左右される、まさに鍵を握る存在なのです。
これが施工管理のコア業務！「品質・お金・時間・安全」の4大管理
施工管理の仕事には、特に重要とされる「4つの柱」があります。
これを「4大管理」と呼び、すべての業務の基本となります。一つずつ、見ていきましょう。
工程管理（時間を守る）
これは、工事を決められた期間内に終わらせるためのスケジュール管理です。
工事にはたくさんの段階があり、それぞれ順番通りに進めなければなりません。例えば、基礎をつくる前に、壁を立てることはできませんよね。
すべての作業がスムーズに連携できるよう、全体の計画を立て、日々の進み具合を確認し、遅れが出ないように調整するのが工程管理の役割です。
安全管理（いのちを守る）
現場で働くすべての人が、ケガなく無事に家に帰れるように、安全な環境を整える仕事です。これは4大管理の中でも最も大切です。
危険な場所はないか、無理な作業をしていないか、常に現場に気を配り、事故を未然に防ぎます。毎朝の安全確認や、危険を予測する活動も、この安全管理の一環です。
品質管理（たしかなものをつくる）
設計図や仕様書で定められた通りの、丈夫で長持ちする建物をつくるための管理です。
決められた強度の材料を使っているか、設計通りの寸法でつくられているかなどを、工事の各段階で厳しくチェックします。その証拠として写真を撮って記録に残すことも、大切な仕事の一つです。
原価管理（お金を守る）
決められた予算の中で、工事を完成させるためのお金の管理です。
材料費や人件費など、工事には様々なお金がかかります。無駄をなくし、効率の良い方法を考えることで、予算を超えないように調整します。会社の利益に直結する、とても重要な役割を担っています。
新人施工管理のリアルな1日。タイムスケジュールで見る仕事の流れ
現場やプロジェクトの規模によって働き方は様々ですが、ここでは新人の施工管理が過ごす、ある1日の例を見ていきましょう。
午前：現場の「今」を把握する大切な時間
朝は、その日の作業内容と危険なポイントを全員で確認する「朝礼」から始まります。これが終わると、ヘルメットをかぶり、現場の巡回へ。工事が計画通りに進んでいるか、職人さんたちが安全に作業しているか、自身の目で見て回ります。ただ歩くだけでなく、職人さんたちと「昨日の作業、うまくいきましたか」「次はこれをお願いします」といった会話を交わすのも大切な仕事。進み具合を写真に撮って記録することも、後々の品質証明のために欠かせません。午前中は、現場の「今」を正確に把握するための、最も重要な時間といえるでしょう。
午後：オフィスでの地道な作業も仕事のうち
お昼休憩を挟んで、午後は事務所に戻り、オフィスワークをこなす時間が増えてきます。午前中に撮った写真を整理して報告書を作成したり、発注元に提出する書類を準備したり。また、数日後、数週間後に必要となる材料や、工事を手伝ってくれる協力会社の手配も行います。もちろん、現場で何か問題が起これば、すぐに対応に向かわなければなりません。関係者との打ち合わせが入ることも多く、頭と体をフルに使う時間帯です。
夕方：明日への準備を整える
終業時間が近づくと、その日の作業の最終確認と、翌日の準備に取り掛かります。明日の作業は何か、どの職人さんが何人必要か、どんな材料や機械を用意すべきか。すべての段取りを整え、日報などの書類を仕上げて、1日の仕事は終わりです。
施工管理の経験は一生モノの財産。身につく市場価値の高いスキルとは？
施工管理の仕事は、ただ建物をつくるだけではありません。その経験を通じて、どんな業界でも通用する、価値の高いスキルを数多く身につけることができます。
まず挙げられるのが「マネジメント能力」です。プロジェクト全体を見渡し、大勢の人を動かし、お金や時間を管理する。この経験は、まさに経営の基本を実践で学ぶようなものです。一つの現場を無事に完成させられたという経験は、大きな自信と実績になります。
次に「コミュニケーション能力」も格段に向上します。お客様、設計者、様々な専門分野の職人さん、役所の担当者など、本当にたくさんの人と話す機会があります。それぞれ立場や考え方の違う人たちの間に立ち、意見を調整し、一つの目標に向かわせる。こうした経験は、どこへ行っても役立つ、本物の対話力を育ててくれるでしょう。
そして「問題解決能力」も日々、鍛えられます。建設現場では、天候の急変や、予期せぬトラブルはつきものです。そんな時、冷静に状況を分析し、どうすれば問題を解決できるか、最善の策を考え、実行に移す。この繰り返しが、あなたをたくましく、頼れる人材へと成長させてくれます。
これらのスキルは、あなたのキャリアにおける大きな財産となります。どんな未来を選ぶにしても、施工管理の経験が、あなたを力強く支えてくれるはずです。
実際にどのような現場でスキルを磨いていけるのか、こちらの実績紹介もぜひご覧になってみてください。
まとめ：施工管理は、多くの人を動かし「ものづくり」を実現するクリエイティブな仕事
ここまで見てきたように、施工管理は単に現場を見張るだけの仕事ではありません。それは、オーケストラの指揮者のように、多くのプロフェッショナルたちをまとめあげ、一つの素晴らしい作品を創り上げる、創造性にあふれた仕事です。もちろん、ときには天候に左右されたり、様々な調整に苦労したりと、大変なこともあります。しかし、多くの人々と協力し、困難を乗り越え、目の前で建物が少しずつ形になっていく過程は、何にも代えがたい喜びと達成感を与えてくれます。そして、完成した建物がこの先何十年もそこに建ち続け、人々の暮らしを支えていく。これほど大きなやりがいを感じられる仕事は、そう多くはないでしょう。大切なのは、知識や経験よりもまず「ものづくりが好き」という気持ちです。机の上で学ぶ知識だけでなく、現場で実際に汗を流し、たくさんの人と関わることでしか得られない、血の通った経験が、あなたを本物の技術者へと育ててくれます。
もし、未経験からプロの技術者を目指せる環境に、少しでも興味を持たれた方は、気軽にお問い合わせください。
